< 11










だ・れ・か!ロマンティック、と・め・て!!

みたいな事にならないかねえ





















Dramatic...11





























ルフィ、ロー、キッド。それぞれがこの場からの退却の路をとる為に、それぞれクルーとともに大乱闘の中それぞれの道を
こじ開け始めると、いよいよ衛兵たちの数も半分以上減ったように思われた。
それでもちらほらと力ある者が何かしらのつっかえになる為応戦し向かっていくのだが、少なくともが出てこれる分には十分の隙を手に入れる事が出来ていた。
なによりにはまだ曖昧ではあるが、いつか見せた並はずれた脚力があるのだ。は過剰に意識する事は無いが、
それについてある意味での安心感を得ており、いつまでも柱の隅で誰もいなくなるのを待つよりは、出て何処かへ行った方がまだいい策だと考えた。

周りをできるだけ気にしながら歩き出して、さてここからどうやってルフィ達一行に相伴をうまく事運ばせるか―…
「素直に仲間にしてって言うべきだろうけども…なんて理由をつければいいかなあ…」

まだ近くで海軍と戦っているルフィの忙しない背を見ていながらに、そんな考えを張り巡らせていると、ふと、砂埃と、重ね降り注ぐ大声の間から、まっすぐにこちらに向かう影には気がついた。
草を踏みしめる音もかけられる声もないその姿は、ある一定の影を明かせば、簡単に誰なのかわかってしまった。
……あえて不幸ではないと、僅かなファン心にかけて言っておきたい、です。

「ローさん、それ以上こっち来ちゃだめです」
は、彼。ローがこちらについに声をかける間際になって、両手で押し返すようなしぐさを見せて、両掌の間から覗ける顔で、はっきりとこう物申した。
今は別に敵対視しているわけでは微塵もないが。大事なのは彼のイメージであって、の頭の中にいる”かっこいいロー”を崩さぬためにも、は少し染めた頬に眉をあげて出来るだけ小声で伝えた。

「なんだ、そんな風に嫌われる覚えは無いが」
「あるでしょう!」
「そんなに気にした事か、」
「…恥ずかしかったんですよ…!」

少なくとも貴方達より随分刺激のない生活しか送れてなかったものでね…!
は唇を噛んでまた思い出してはぐるぐる回る恥ずかしい一瞬を考える。頬に染めるものが緊張と羞恥と綯い交ぜになる。
それでもまだローさんだからあまり怒る気にもなれない自分が、恨めしい。
ローさんは軽く息を吐き、戦闘の時とは別の、大人っぽい笑い方をした。

「じゃあその償いに助けてでもやろうか」

ローが、素早く二人の間に合ったの手首を、いとも容易く掴み上げる。力の加えられていない掌が、戦闘の最中を表すほどの熱に燃えていて、
細く筋張った指の筋が、の柔らかい左手の皮膚に静かな沈みを生んでいた。
逃れられないという見せつけではなく、それは彼にとって誘いの一種の動作に過ぎないらしいの、だが。
…この、なんだかありそうで現実では決してない展開は、…もしかして――

「…つ、つまり、は」

「おれのものになるか?って話だ」

苦虫を数匹纏めて噛み潰したような感触がして、思わずえ、と口にする。
…おかしい気がするぞ?
何故にして 助ける=ローさんの彼女になる なんだ? ワッツ?
「…嬉しい話ですが、ごめんなさい」
あえて掴まれた手を拒もうとはせずに、は話した。
「退屈する事は無いと思うが」

そりゃあローさんと旅して仲良くなってあのおそろいのつなぎ着てベポとらぶらぶしてみんなでわいわいやりたいにきまってるじゃないですかああああ!!

一口でそんな願望を吐き出してしまいそうになるが、ここは我慢だ、…ローさんの船員とか、死ぬほどなってみてえええ・・!


けれど、ここから先、ローさんは新世界の為にあの人とぶつかる事になる。
…あんな所に私がいては、この世界の軸を崩し兼ねない。
は、自分がすでにここにいる時点で、私の知っている世界とは違う道が生まれているのだと自覚はしているが、
それでも、あの世界を進んでいきたかった。なによりも、この世界の果てを知らない私にとって、どれほどの冒険が後控え、彼らを試すのだろうと思うと。
その船に乗りたくてどうしようもなかった。今更になって本気で思うのだ、現実的では無い感染を受けた今だからこそ言える、話。
…こんな事本気で思わなかったんだ、今しかない。…この世界で必死に生き延びる事だけを、考えてみたい…

「ローさんにはきっとまた会えますよ、」
は、徐に自分の手首を掴んでいた彼の右手に重ねて手を乗せる。少しだけ胸がくすぶられた、
離れて行ってしまう熱を追うのはひどく難しい話なのだ、体温が上がるのはいつだって急な、癖をして。
静かに笑って見せる、そろそろ行かなければならないんじゃないかと、思った。

「新世界で会いましょう」

笑ってそういえば、ローさんが少し驚いたように目を合わせ、すぐにそれは閉じられた。
どこか楽しそうな笑い方は、先ほどとはまた少し違って、おかげで私も笑顔を崩さないでいられたのだ、

「死ぬなよ、」
「頑張ります」

彼は私の手を離して、やさしく頭を撫でてくれた、――やっぱり格好いいんだ、て、心底思わされる。
そしてローさんは次に、首輪につながれた大海賊、ジャンバールのもとへ向かった。
…やっぱり少しでも気になるものは手に入れたい人なんだなあと、納得もした。

その時、自分の腕を素早くつかんで走り出す足に、は思わず転げそうになった、

「ぅえっえええ?!」

!お前も逃げないと危ないぞ!」
「! チョッパー!!」


驚いた声も流して、チョッパーは足早にの腕を掴んで走り出す。
遠くの方にいるルフィ達の元に、私を連れて行こうとしてくれているのだ。
……なんていい子なの…!!!
じーん、と感動がわき上がりそうな中、チョッパーも少なからず徒労しているのだろうという事に気がついて、
は思わず、小さい足で走るチョッパーの足を掬い、抱える様にして、足を飛ばした。

「えっ、え、!足早いのか!?」
「みたい!一気にあっちまで飛ぶよ!」
そういうと、チョッパーは思わず腕の中、二つの蹄でなんとかの服に掴むことで声をとめた。
…腕に抱えるには少し重かったかもしれないと、今更思っても見るが、むちゃくちゃ可愛いので、許す!!

すぐに道は開け、兵の間を一瞬の風のように抜けると、はルフィ達とデュバルの一行に難なく入り込む事が出来た。
それに気付いたナミ達は少し安心したように笑って返してくれたが、ルフィやウソップ達には、自己紹介が必要になっている。
「チョッパー!!よかった間にあって」
「おめぇらも急いで乗れぇ!もう発車するぜ!」
急いで一つのライダーの手をとり、はチョッパーとそのまま脱出の帰路を手にする事が出来た。
そしてもちろん、ルフィや他の何人かの頭には自問自答してやはり理解が出来ないという顔でこちらを見た人もいる。
ついに差して悪びれたつもりもなく、ルフィが笑顔で声をかけてきた。
「なあ!お前、誰なんだ?」
「あたし!よろしくね!」
「おう!よろしくな!」
そんな簡単で優しい会話が成立したのち、後ろから「それで終了かァ!?」というウソップの大きな突っ込みが聞こえて、
流石この海賊団はノリが良くて賑やかだなあと、この状況下でありながらもそっと思った。
サンジさん達が綺麗にルフィ達に説明しているおかげで、自分は余計な口をはさまないで済んだのだが、
一応はすべてを理解したルフィは、少しの間納得したように思われたが、
一行がジャッキーさんの元へついて、ぞろぞろと中に身を隠すよう急いでいると、ふと彼が私の横で口を開いた。
「じゃあ、はどうするんだ?」
「えっ…ん――…新世界に…行きたいんだけども、」
ぞろぞろナミやロビン達が入り込む中、ルフィとは二人、扉の外で佇んでいた、恐らく傍から見れば、海賊なんて素知らぬ若者が仲良く話している様にでも、見える気がした。
の仲間はどこにいってたんだ?」
「それが…記憶が、なくなっちゃったみたいで、」
「本当か?!大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、ただこれからどうしよっかなあ、て」
「だったら俺らと行けばいいじゃねえか!」
は思わず、何の気なしのルフィのその言葉に”こんな急に?!”と流石に驚いてしまった。
自分からうまく頼みこめる機会を作ろうと思ったのだが、思った以上に彼は、私のそんな浅はかな考えよりもずっと解りやすく、そして素直に道を創ってくれた。
「……いいの?」
「当たり前だろ!は俺たちの為にここまでしてくれたんだ!」
「(本当に大したことしてないけれども)ありがとう…!お願いします!」
つたないお辞儀をルフィにする。扉を開けてゾロが速く入るよう促されて、ルフィはの肩を一度音が出る程度に叩いた、それでも、が痛みを感じる事は無かった。
「気にすんな!もう入ろうぜ!おれ腹減ってんだ!!」
そのまま腕を掴まれて、とルフィは中に入り込んだ。中でもまたいくつかの質問はされたのだが、
ある程度わかってはいたが、には覇気以前に、海賊という名を持つほどの気迫が無いのだ。
だから平気で攫われたり警戒されずに手を出されたりしてしまうのだが、
……まあそんなささいな事は気にしないさ!だってもと女子高生だもの!
と、ある種若さらしい向上心を持ち一応は受け流すことにしたのだ。それでそれが何の役に立つのかといえば、
基本的に人を見る目のあるゾロやナミ、そして賢いロビンや(一応はサンジ)も、差してこのという人間の介入に、
警戒や虞、どういった傾向であろうと、それがこちらにとっての害悪になりえるものではないかという、一片の匂いも見せなかった事だ。
ルフィがようよう言葉をつづけ、一緒に新世界へ連れて行ってやる事にしたと続いて、が頼み込むよう頭を下げれば
みんなはにこやかに受け入れてくれたのだ。それはまるで、一匹のすて猫を拾った時の様な少年と、何も言わず受け入れる静かな家族のようだった。
椅子に掛けるよう勧められ、ジャッキーさんが優しく笑って、「この子達と一緒なら、どこでだって寂しくないわよ」そう言ってくれた時、
始めては、今まで何度も何度も追い込んでいたあらゆる罪悪が、やっと許された様な気がして、渡された飲み物を持つ手が震えるのを気付かれない様に、静かに一度だけ、泣いた。

































































(20090925)