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パンクロック ゴシック ヴィジュアル系

………うん、あたしのイメージって、そんな感じ!!















Dramatic...3
























どさり、擬音で表すとすれば、それが多分相応しいと思う。
キッドさんの、ふさふさしたコートのファーに頬が触れて、また綺麗に受け止めてもらった。
ベポの時もそうだったけど、普通なら一緒にこけてもおかしくないのに、一体どれほど力持ちなんだ…。
今は、丁度キッドさんに抱きついてる状態。びっくりなことに、もう漫画のキャラという抵抗がない。
キッドさんの顔は見えないが、自分を支えていた左手をおろし、その場に立たせた。
そして彼に目を向けると、自分より顔二個分くらいはありそうな、キッドさんのその鋭い瞳と眼が合い、そして口が開かれた。

「おい、お前か?」
「は、え?」
「ぎゃあぎゃあ煩ぇから撃ち落としたんだがよ、叫んでたのはお前だろ?」
「うるさ…!いや、私攫われかけて…あの、」

必死でこの状況を説明しようとした、その時、パンっと後ろから、乾いた銃声の音がした。
が驚いて顔を向けると、先ほど墜落した男たちの一人が、こちらに銃を向けていた、そして、その拳銃からは細く煙が伸びていて、すでに発砲していると示していた。

「う、たれた―!?」
どこを!?いつのまに!?
そうが慌てて体を見渡そうとしたとき、徐にキッドがの腕を掴み、自分の後ろへとやった。
軽くではあるがその力強い誘導に、一瞬躓きそうになりながらも、立て直し、キッドの方へ視線をやると、彼の手には一発の鉛玉があった。
それを摘むように遊んで見せて、ふいにこちらへ眼を向ける。

「そこにいろ、すぐ終わらせるからよ、」
「……はい…」
(…………なんだかよくわからないが、助けてくれる?)

そして次の瞬間、そこらじゅうにひしめく機体の鉄、弾丸、刀などが、男たちへ降り注ぎ、幕が、下ろされた。

そこに立ちつくしていたは、その光景を見てしまった。
その…残虐というには余りにも容易く、そして、恐ろしいほど気休めに消えていく血の輝き…、
体が震えた、目の前で死がつくられていく、だめだ。見ていられるわけがない!

気付けば、脚の奥が痺れ、まるでゆっくりと脚が眠るかのように、その場に膝をついた。
腰を落とし、体が硬直したままに、その光景が眼に流れていく。

キッドさんは、ほんの数十秒で終わらせてしまった。
楽しそうという光景すら見えない、とりあえず煩いから消してしまおうという、それは退屈凌ぎにすらもなっていないのかもしれない。
何十という男の声が、今では何も聞こえない。静かに燃えていく火の影に送られて、彼がゆっくりと踏み出す足音が、ただ力を見せつけているだけだった。

―――知っているはずだ。3億1500万という額が、どれほどの血と、死と、戦いによって築かれたというのかぐらいは。
けれど、わかっているはずなのに、怖くてたまらなかった。
こうして当たり前に死が存在する世界で、生きろと?
私はもう家族も家もないというのに、どうしろと?

恐ろしくなった。滲んだ瞳が、また溢れかえってくる。
ぽたりと、草に涙が落ちた。

「おい」
そして、頭の上から投げかけられた声に、ゆっくりと顔をあげる。
汚れ一つないその姿。

「なんで泣いてんだ?撃たれたのか?」
「あ、たし……かえれ、ないから…」

ひっく、と、しゃくりをあげながらも話す。
必死だった。彼に殺されるかという事ではなく、もう自分が、ここで一体何をすればいいのかすら、見い出せないのだから。

「ひとり…なんです、それで…」
「身寄りがねぇって?」

――そういう事に、なる?
きっと、戻れる事がないのだから、私に家族がいるという事は、後々面倒になってしまうのだろう。
瞳からどんどん涙があふれてくる、自分でも驚いた。なんでこんな、キッドさんの前で…
ひくっ、と一度鼻を鳴らし、なんとか彼に目を合わせる。

「……きっどさん……、」

の声は、とてもか細く、キッドの耳に届いたかすら曖昧だった。
キッドは、の様子を見ながらに、後ろにいた仲間たちに合図する。そして、一度溜息をつくと、両手を伸ばし自分の事を抱き挙げ、ひょいと肩に担ぎ上げてしまった。
え、と思う間もなく歩き始め、どうやら近くにいたらしい仲間たちに、いくぞと声を出していた。

「え、え?キッドさん?あの…?」
「とりあえず呑みに行くからついてこい、話はそれからだ」
「え、あ、…はい…」
「腰抜けてんだろ、我慢してろ」

「…………はい、」


すたすたと、また脚を進み始める。
まるで何事もないかのように、自分の命は救われてしまった。
でも、自分はベポにあそこで待っているようにと言われている。もしベポが連れてきてくれたのなら、ベポの優しさを踏みにじるどころか…ローさんまで怒らせてしまうかもしれない…!

うああだめだ!ベポが!あんなかわいいベポを泣かせてはだめだああ!!

はなんとかキッドにその事を伝えようと思ったのだが、思った以上に容赦なく、彼は幹達を飛び越えていた。がくんがくんと自分が揺さぶられてるのに気づいているのかもうそこまで丁寧ではないのか、支えられている腕と自分の掴んでいる服の裾だけが唯一の頼りだった。
せめてものお礼を言おうと思ったのだが、この動きの状態でのキッドさんの肩は、思った以上に怖い。
隣に並ぶ鋭い、まるでどこかのヴィジュアル系の服装の様なトゲ…、
いや、これはおしゃれなのかな…?…とにかく、そんな服でキッドさんはずかずかと歩き、その揺れがまた…酔いそうになる。

今口を開けたら舌を噛んでしまいそうだ…。そう思い、は静かに背につかまっていた。

周りに浮かぶシャボン玉を避け、
思い返せば、ここの暗がりは、隔離の様にさらされた、血の乾いた匂い。無法地帯である―――。

そうだ、ならばわかる。ここは24番GR辺りだ。
記憶と同じように世界が動いている…。もしかしたら……。

は思わずにも、その考えが過ってしまった。


”接触を、大将たちとの戦いを止められるかもしれない……!!”








そのころ、遠く44番GRの近くにへと乗り上げたルーキー達が、このシャボンディ諸島に心躍らせ、楽しげに
声をあげているという事に、は気づくことは無かった。





















「ったく、ベポ、お前キツネにでもやられたんじゃねえのか?」
「ち、違うよキャプテン!本当に…ここに女の子が…」
「いいから、戻るぞ。あっちでドレーク屋達が戦闘起こそうってのに、のんびり女一人探してられるかよ……」
「う……うん、」





































(20090428)