という事は、今どこかでボニ―さんがご飯食べてたりドレークさんが戦ってたりするわけだ!














Dramatic...4

























「オイオイ…まさかこうも上手く集まるモンかよ…」
「あれはボニ―海賊団…それにホーキンス海賊団も見えます」
「キッドの頭、どうします?あっちにも似た店がありますが…」
「わざわざこっちから出向く事ァねえだろう……今は客人もいるんだしな」

(はっ!!あたしか!!)


を連れて、キッド達は大きなレストランの近くにある暗い酒場に入って行った。
ずらずらと入り込んでくる海賊たちにも、店員はそこまでの恐怖を感じているようには見えなかった。
私はそこで初めておろされ、キッドさんの歩く後ろに何とか付いていく。
…誰も自分に対して何も言ってこないのが、彼の船長としての威信を表しているように思えた。

店員はすぐに団体席を空け、盛んに動き回っていた。
その忙しなくだが機敏な足音が耳にははいるのだが、肝心の目線はさっきから逸らせないままでいる。
まるで空気が違う、彼らの座っているこのあたりが、玉座のようだ。
クルーが酒を頼んでいるのを横に、キッドは自分の隣にを座らせた。
肘をつき左手で頬を支えながら、に声をかける。

「……で、お前はどうするんだ?」
「……記憶が、ないんです…」

キッドさんは、私の言葉に軽く苦笑しながらも、静かに置かれていたグラスに手を取った。

「そりゃまた面倒な奴だな…で、能力者なのか?」
「いや…」
「……なら強ぇ訳じゃねえのか…、だったらオークションが相場だな…」
「まっ、それはいやです!売り飛ばさないでください!」
が気を揉んで怯えた表情をすると、さも思い通りであるかのように、キッドは愉快に口角をあげた。
「クッ……ああ、しねえよ…」

…どうしよう…本当に。彼に助けてもらったのなんて、殆ど運にすぎないじゃないか。
は彼の依然とした気を張らない態度に、少しだけ安泰したのだが、下手に下らない事を言ったら殺されることもざらじゃない。
けれど…どうにかしても、何かしらの助けが必要だ…!

「だがよ、お前はどっかの種族のやつだろ?その眼…」
「へ、…眼?」

そう言われ、思わず近くの金属の箱に顔を寄せると、驚いたことに、そこには何て言おうと日本人とは思えない。特異な身なりをした人間が立っていた。
洋服は神様のせめての情けなのか、パジャマから普通の洋服に変えてもらっている事は、まだ納得できるのだが。
鏡にうつされた様子は…神様の気まぐれなんかで理解し得ない変貌を遂げていた。
肌はまるで溶けた蝋燭のように白く広がり、髪の色がハチミツのように明るくなめらかだった。
おまけに瞳が真っ赤だ!怖いほどに澄んでいて、見つめている事が自分ですら恐ろしい…瞳孔の真黒な色彩に映える、赤い血の流れの様だった。
驚きでは声をあげる事すらできなかった。まるで自分じゃない。

…何て美白だ…!!ありがたいけど!それに髪の毛かわいい…、あたしの縮毛で傷んでいたかみのけが…!!
いやでも赤い眼はいやだなあ…怖いよこれ、なんかあれみたい…あの、動物の…――

「なんだ?今更自分の姿にそんな驚きやがって…」
「わっ、え、いや…はは……」

そういえば、神様が私と離れる時に、こんな事を言っていたような気がする。


―――とりあえずなんかしら簡単には死なないようにする!


初めは、それの意味すらも理解する暇はなかったのだが、もしかしたら、自分の身には、気づいていない間に変化や力を加えられているのかもしれない…。
謎は、自分では到底解明できないただの想像にすぎないのだが、自分では無いこの姿が、何かの違いを見せつけている事は汲み取れた。

そうだ…、
が、自分の姿について知っているものはいないか聞こうとした時、目の前を横切る食材の数々に、不意に目を奪われた。視線どころか頭まで追いかけて、遠くのテーブルに運ばれるその姿を、じぃいい、と見つめてしまった。そしてその様子を、キッドは始終見つめていて、小さく鼻を鳴らすと、メニューを取り上げた。
「何が食いたい」
「え、そんな!」
「あんなアホみてェに食いたそうなツラして何言ってんだか…、金ぐらい出してやる」

そんな風にキッドさんに優しく言われてしまったら、私の食欲は我慢できないじゃないか。は恥ずかしさを上回ったその胃の願いに、忠実な答えを出した。
「じゃ…じゃあお肉食べたい…です…」
そうが呟きながらに溢すと、キッドは通りがかりの店員に告げた。そしてすぐさまにお皿いっぱいの牛肉やご飯、そして何を頼んだかはわからないが、ご丁寧にご飯には旗が刺さっていた。
「……お子様ランチみたい…」
「お似合いじゃねえか」
キッドの楽しむような笑いに、思わずひっど!と突っ込んでしまいそうな心を抑え、込み上げそうな涎を呑み込みながらフォークを手に取り肉を口にする。昔から、ワンピースの世界のご飯はおいしそうだと思っていたのだ。名前からオシャレなものばかりだし、おまけにたくさんたくさん並べられ、それを全部幸せそうに頬張るルフィのあの笑顔。
……口に含んで、ああやっぱりおいしい!そう思った。こんな高級なお肉を食べた事があったかな?と同時にいくらするんだろうと、気にしてしまいそうな、そんな高級肉を口にしているようだ。食べながらに頬笑み、止めずに次へ次へと口へ運ぶ。
「おいしい…すごいおいしい…」
「なんだ、飯も食ってなかったのか」
「えと…昨日の、夜から?」
へへ、と笑いながらに、スプーンでご飯も口にし、微笑む。キッドさんが、お酒を飲みながらにその様子を見て、ふとばちりとと眼があった。少し食い意地が張ったように見えたかもしれない、はそう思い、動かしていた腕をとめた。
「…下品でしたか」
「いや…そうじゃねぇさ」
けれど、としても自分の食事をこうも人に、そしてキッドという云わばつい最近までカッコいいだの何だのを言い放っていた相手に、こうして見られているというのはそこまで嬉しいものでない。おずおずまた再開しようとするも、キッドが酌をしながらにこちらを見る所為で、上手く飲み込めなくなってきた。フォークを置いて、何か自分の力に期待でもしているのではないだろうかと思い、思い切って聞いてみようと試みた。
「キッドさん…あの…」
「お前……初めからそうだったが、何で俺の名前を知ってんだ?」
「え、え!いや…それは…」

むっちゃ好きだからです。
なんて…言えないよなあ!言っちゃだめだよなあ!
これでもローさんと並ぶくらい好きなキャラだけど…、そんなこと言ってグサッっ★とやられる訳にはいかない!

「だって…ゆ、有名じゃないですか……」
「……そりゃ光栄な事だ……、記憶がなくても覚えていてくれるなんてな」


うあああああああ地雷ふんだああああああ!!!
が思わずガタンと立ち上がり、わなわなと口を震わせる。
周りもその様子になんだとこちらを窺うが、キッドの仲間たちは差して気にした様子も見せずにまたグラスへと顔を寄せた。
キッドは半分意地悪そうに、そしてまた半分怪しげにこちらを見ていた。
その眼は何か持ってんならよこせと言わんばかりの、脅迫に似ている。
変な弁解は厄介どころか最早首を絞めかねない、はその事を思い知らされた。
自分がまだ成人にも満たない事とは別に、目の前の人間とはそういった経験や力量、ありとあらゆる点に於いて、まるで届かない霄壤の違いがある。
だが、彼もまた、事実を話して納得させる事は不可能だろう。
たとえ彼が何物も受け止める懐があったとしても、信じるにはとても無理がある話だ。
は小さく口を窄めて、ごめんなさいと誤った。

「記憶が無いのは…ほんとなんです……でも、キッドさんの事は…しってて…」

何て言い訳をすればいいのだろうか、はそこから言葉を濁し、キッドと目線を合わせる事すら敵わなくなった。

「……、まぁ別にそんなこと気にしちゃいねェさ…お前が記憶無いのもそうだが、俺が気になんのはその人間離れした姿一つだからな、」

キッドは、ゆっくりとに座るよう促し、瓶に手を伸ばし注ぐ。
の方としても、この風貌に関して、自分の変化に何一つの心当たりがないのだ。困ったように目線を泳がせ、両手を膝の上に置き、キッドの前で謝罪のように縮こまる。

「白いな……北の海の生まれか……特殊な種族か……」

キッドの目が、自分とぶつかり、キッドの瞳も自分と同じように真っ赤な事に気付いた。
いっそおそろいじゃないですか、って、言ってでも見ようかと思った、その時、何かを感じだキッドは、顔付を変えて向こう側の席に眼をやった。

「…何だ、さっきからチラチラ喧嘩ふっかけてきやがって……」
「う、え?」

「ああ……オンエア海賊団のやつですよ…頭」

キッドが見ていた方向には、だらりと伸びた腕と、組み上げられた髪が特徴的な男が座っていた。
その態度もまた、キッドの船員曰く海鳴りと呼ばれる船長らしい堂々とした態度で、こちらを見ていた。
確かにキッドの名は大きく知られているであろうから、三億も超える男の隣に自分の様なまるで変わった風貌の人間がいるという事は、
見ていて馬鹿にされる原因だったのかもしれない。

だからと言って…そんな見られてたのかなぁ…。

がキッドの視線を見ながらに、そんな事を考えた瞬間。
キッドの体が、飛んでいくように目の前から消えて、それを追う暇もなく、破壊される壁の音が聞こえた。
丁度ほかのクルーたちと同じくらいに、その方を向くと、大きく破壊され、穴のあいたその光の先へ、キッドが向かっている姿が見えた。
煙の中に映る背中が、先ほどと違い恐ろしく、殺意や、大きな狂気に似た何かを見せていた。
周りのクルー達が、何とか乱闘を止めようと声を上げているが、キッドの視線にはもう相手の姿しか入っていなかった。
左手で懐からナイフを抜き取り、肩をならし瓦礫から外へと出て行ってしまった。


「あー頭いっちまったよ…」
「ああなるともう止めんのは野暮だろなァ…」

今、周りの注目は完全に外の方向へと注がれていた。
まさに億越えルーキーたちの喧嘩が始まろうというのだ、互いのクルーは湧き上がる闘争心でその始終を見ようと瓦礫の外へと吸い寄せられていく。
はその時に、さりげなくこの場から動けると考えた。
キッドさんには悪い話かもしれないが、やはりベポとの約束の為にも、彼のもとへ向かわなければならない…
そして、戦いを止める為にも、ケイミーを攫ったやつらを見つけないと!

は、周りに響く声の間をくぐる様に抜け、一人の酔ったクルーに”ちょっとでかけるね”とだけの残し脚を反対側の勝手口へと向けた。
男はおお、とだけまさに何も聞いていないような生返事を返した。これでもし問質される事があっても、何とか言い訳は付きそうだ。
扉の前までつき手をかけようとした、その瞬間に、後ろから自分を呼びとめる声が、歓声の中届いた。

「どこへ行く」

「……お、お土産買いに行きたくて……」

どぎまぎと何とか言い訳を言いながらに、が後ろを振り向けば、そこに立っていたのは、顔を隠す大きなマスクと、手に付いた鎌が光る、先ほどまで船長のすぐ隣にいた男だ。
……もちろん知っているもの、殺戮武人、キラーだ。

「……キッドはまだお前を帰すとは言っていない」
「う、でも別に…あたしキッドさんにお返しできるほどの者じゃないので、そんな…」
「違う」
「え?」
「キッドはそんな事を待ってはいない、ただお前に何か意味があって連れてきたんだろう」

……そう言われ、思わず先ほど見た自分の姿が脳裏に過った。
確かにこれは種族ともつけがたい人間のような形だ。けれど、別に自分として何かの力が付いている事は微塵たりとも感じれない。
だから、そうも買い被られてしまっても、自分としては困る話にしかならないのだ。

「…とにかく、お前をまだ帰すわけにはいかない」
「……ほんとに強くもなんともないんです」
「―――…強さの問題じゃない」

キラーが、キッドの背にまるで彼の反対側を守る様に、直線としてこちらに向かってきた。
何故今戦っているであろうキッドに目を向けないのか――
一瞬それを考えたが、すぐにそれは野暮だと悟った。
キッドの相手にもならない相手だと、彼には分るのだ。
そして彼の背をいつも見ている右腕――。二番手という名の通りに、まるで隙がなかった。

は、彼の近づく足音を聞きながら、絶対に言い倒し逃げれる相手ではないと思い。
キラーが右足を上げた瞬間に、取っ手を掴み勢いよく外へ飛び出した。
キラーの俊足がすぐに扉を破壊する音が聞こえ、ああ逃げきれるわけがないと思った。

だが、想像を超えていたのは、捕まるまでの時間ではなく、
自分の、まるで時間を蹴るような脚の動きだった。



「――――は、や いいいい!!!」


地面を踏むたびに周りの場面が書き換えられていく…土、草、人々の影を飛び越え誰の視線がこちらに動く事もなく、あっという間に彼を引き離してしまった。
は自分の足の速さに驚いている半面。まるで自分が風になったかのように突き進んでいくその鮮やかな動きを楽しんでいた。

――神様私に逃げ脚の速さをくれたのか!うれしいような空しいような…!!


「う、ひぁ!!」
その時に、自分の速さに慣れていなかったは、思わず目の前の光景に気を回す事が出来ずに、人間とぶつかってしまった。
お互いによろけ倒れそうになってしまったが、しっかりと前の人が自分の肩を掴んでくれたおかげで、お互い反動だけで済む事が出来た。
またしても人に受け止められてしまった、そう思いながらに、が顔を上げる前に、大きな這った声が響き、びくりと肩を震わせた。

「あっ、ぶねえな!なんて速さでつっこんでくるんだよ!?」
「ごっ…ごめんなさい!……って、」

が謝罪しながらに顔を上げると、目の前には、さらりとピンクの髪をなびかせ、大きな口が特徴的の……





ボニ―さんだああああ!!!








































(20090428)