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私はやっぱりばかだ…そうですばかです。

そうです私が変な女子高生です―――(にぃいいいっこり)!





















Dramatic...8























こんな事言ってもしょうがないよなあ…いや、事前に回避もどうせできそうもないし、しょうがないよね?ね?

うああ…神様答えてくれないみたい…しょんぼり



「何、ちゃんあの人と知り合いなの?」
言葉を同じに受け取ったナミは、驚いたようにこちらの耳にそっと口をよせた。
ですよねー、だってあたしまだ通行人程度の人間にしか思われてないのになんであんな見た目あきらか怪しい感じに
話しかけられてんだって話ですよねー。

「いやあ…知り合いというか…うううん」
なんでしょうか、助けてくれたいい人だと思ったらなんか珍しい動物扱いされて正直しんどいっす。
…そう悪態を軽く心の底で思っていながらも、ナミに始終愚痴る事も出来ず、
まだ冷めやらぬ差すような視線を感じて、徐には相好を崩す様な笑いを浮かべて、すすすと彼のもとへと歩み寄った。
それすらも当り前だと待ち構える彼の体制が、少しだけ憎らしかった。
何さ…今更お金なんてはらわないぞ…

彼の前にまで来れば、組んでいた腕を少し揺らして、また、あのテーブルの時に見せた様な、意地の悪そうな顔をした。
だな、」
あ、この人今の会話もがっつり聞いてたのか!
「キッドさんの地獄耳」
「褒め言葉だな、」

「……あの時は勝手に逃げてしまってごめんなさい。」
「餌付けの次は首輪でもつけてやろうか?」

「……怒ってるんですか、」
まさか、彼はそう言って首を傾げた。
「お前は麦わらの仲間なのか?」

ちらりと視線を、彼が促すようにそちらへ流した、仲間…だなんて、言えないよね、あんな我儘じゃあ。
「まあ…間接的に協力関係をむすんだといいますか…」
キッドがその話に眉を寄せて、言葉を返そうとした時、いくつかの足音がして、係員が走って私たちがいたところからすぐそばの扉に手をかけたのを見て、
は驚いたかのように思い返し、考える脳より早く、キッドの影に隠れていた。
幸いにも長いコートというものが役に立ったもので、この大きな肩の後ろに隠れてしまえば、真正面からはの足すらも見つける事は困難であろうと思われる。
静かにその奥で息をすることに徹したの姿に、会えて気を遣ったものか、目線を変える事無く尋ねた。
「何だ?」
「出来れば匿って頂きたいです…きますよ。」

何が、という彼の質問をが聞く前に、ただのVIP客とは何層も変えられたトーンの響きが、会場の上の階に響いた。
いくつかはそれの意味に気付いて後ろを振り向くなんてことはしなかったのだが、それでも歓声に紛れた不自然な空気のうねりに
気を取られた客のいくつかが、その声の先に視線を起こし、やがて歪めすぐに戻されるのに、それほど時間はかからなかった。
「チャルロス聖!連絡はいただきましたがオークションはまた次にでも…」
「うるさいぞえ!お前らが女をつかまえないから何処かへ逃げたんだえ!わちしはあいつも飼うと言ったえ!」
「申し訳ありません…チャルロス聖様の御身体の方が何よりも大事だと一同思っています故…!」
「ふん…絶対に今回は何か買うえ、むかつく時にいじめてやるペットでも買おうかえ〜」

キッドはその横で流れていく会話と姿の端に、ふと現れた”女”という単語に気付いた。
別段何かしらを通した訳でも静かな夜を共にした訳でもないが、その女という言葉の一つで、すぐに
今自分の後ろで方を強張らせている女の姿を、真っ先に重ね合わせていた。
運が悪いというよりは、そういう命運の類なのか、どこへ行ってもトラブルを生むその存在に、キッドは
知らずにある不思議な、共感に近い感触を考えたが、それが海賊というよりは、もっと奥底で、元々、
ある一定の海賊がもっていそうな子供の、真っ黒な宝石に近い心の鏡でもあるような気がして、
それを認めかけた自分にもまた、納得が出来ずにいた。

「…まあ、大体は読めたが」
「キッドさんが頭良くてよかったです、」
「で、ここには何しに来たんだ」
「え、…いや…うぅううん」

曖昧に返事を返し兼ねるのちいさな掌が、キッドの背に広がるコートを掴んでは、不安定なものを映す様に揺れる。
キッドは顔を見る事はしないが、ある程度の想像はできていた。
…決してそれは血に塗れたこちらの世界では無いのであるが、それでも、今までのように、
何かしらのトラブルでの事情だろうという事が十分に考えれて、呆れる事すら面倒に思った。

そのとき、歓声が叫び声のように轟いた、はコートの端から顔を出し、遠くのその歓声の親に目を寄せる。
丸い水槽が、何もしゃべらずに沈黙した塊が、その中でひどく重々しい鎖を付けたケイミーが!
始めて見る者もいるのであろう、大声や歓喜、一種の侮蔑に似た声の反響、さまざまな大人たちの本音が、口の奥から
どろどろと生まれ出ていた。そしてその声はまたさらに被さる金の声で埋もれ、重なる様に…男が口を開いた。
「五億で買うえ〜!」
突き出た声と腕の輝きは、そこにいた誰よりも自信に満ちて、そして若々しくも思われた。
はその声が、ある意味での確信にも変わる事に自覚した。

――さあ、これからだ。
…ついに始まる、どうすれば―――
どうやって…――このあと…はやくしなくちゃ……

――いや…、

は、この後に霞んで見えない記憶の中、目にも見えないものに不安がっているんだと気がついた。
何をとめる?…確か、ケイミーは助かるんではないだろうか?

そうだ、ここはあくまで漫画の世界であって、事実と異なるのは私の存在でしか無い
つまりは、一番の得策は、何もしない事ではないだろうか、

じゃあ…私はさっきから何にこんな不信感を抱いているのだろうか?
この胸騒ぎの姿は、何に繰り抜かれた心臓の形だろうか…、

…俺達は帰るぜ、お前はどうするんだ」
「あっ、私はまだ用事があって…」
「関係ねぇ事に首突っ込むのは馬鹿っていうんだ」

え、と。歩き始めたキッドの顔が、ようやくと視線を交わした。
少し真剣な、それでも楽しそうな、そんな目つきが鋭く瞬きをして、コートが揺れて歩く足が、遠ざかっていく。
「まあ…関係ねえのは、俺も同じだがな」

それにつられ、横からすり抜けついていく彼の仲間たちに、まるで置き去りにされた人形の様なは、
また自分が何かをしようとしていることへの不安に胸を苛まれた。
物珍しい集団の中で、飾る額縁すら持っていない絵の様な自分の足。

そして、何か思いつめようとした胸が錆びつきそうだったそのとき、
大声がした、ルフィの声だった。



目の前で起きた音だった。
それでも、すべてに現実味が帯びていない錯覚を起こしているには、それはまるで世界では無かった。



























































(20090922)